SSブログ

レコジャケ、斜体、ノングラ [グラフィックデザイン]

badcomapany.jpg

いつも訪問いただいてる方のブログで「アンドリューW.K」というミュージシャンのはじけたジャケットを見て、刺激になりましたので、私も古いジャケットをまな板の上に。

来ますねバッド・カンパニー。学生の頃良く聞きましたが、再結成ライブのニュースを聞くまで忘れてました。(ごめんなさい)

ロックレコード(LP)史上に残る素晴らしいデザインのレコジャケです。
デビューアルバムなんですが、ここまで中のシンプルでストレートなロックを表現できてるジャケットってそうそう無い。デビューアルバムですよ、普通はクールなイメージで長髪のメンバーの写真を並べたがりますよね。
しかもぶっといゴシック体を斜体にして左下から右上に対角線上に配置してます。
この斜体が放つ「勢い感」。当時はLPジャケットですから30センチ角に近い大きさでこれはすごいです。まるで「Rock」そのもののようなこのジャケット、一見黒のベースに白いロゴがあるだけに見えますが、実際少し色みやディテールもあって、凝ってます。まあ、凝ってなくてもまったく問題ないんですが、少し汚すような感じで、ラフさがまたロック的ではあります。

写真やイラスト、またデザイン的な要素を極力入れずに、文字を中心に構成するのを「ノングラ」(ノングラフィック)と言いますが、音楽で言えばメロディーのあまり無い、主張を大きな声で吟ずるようなタイプのラップに近い感じ。非常に強い原稿が出来ます。(強いイコール諸刃の剣ですが)

斜体は今あまり好んで使われなくなりましたが、やはり言葉に勢いや動き、力を感じさせることが出来ます。このジャケットの文字が正体で、普通に横に並んでいるのを想像してみてください。結構おとなしくなっちゃいますね。写植時代には斜体番号を指定して、キャッチコピーなんかに良く使ったものです。

残念ながらこのデビューアルバム以降のバドカンのジャケットは、いろいろ工夫はしてるようですが、いまいちです。いきなりヒットがあって、メジャーになったからでしょうか?アメリカ市場を意識したのかもしれませんね。難しいものです。

nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

撮影小道具 [写真]

pizza2.jpg

この小道具とは、カメラマンに必要なものではなく、衣装などと同様スタイリストにオーダーする類いのものです。シチュエーションづくりに使うために用意します。
先週末は料理撮影でしたので、料理写真で例を挙げさせてもらいます。もちろんファッション撮影でも白ホリや屋外撮影(持ち物など無し)ではなく、屋内で、インテリアなどと一緒に撮影がある場合は小道具がいりますよね。

我々アートディレクター(またはデザイナー)は、どういう世界観を見せたいか、どういう写真にしたいかをスタイリストに伝え、必要なものを借りて来てもらいます。発注する人、される人の傾向と能力によって、大きなところだけにとどめる場合と、細かい指示をする場合があります。
料理撮影の場合は(スタジをで撮影する場合)重要なアイテムが、天板と食器です。この2つがあれば、基本撮影可能です。(もちろん料理研究家の家で撮る場合などは、そこにあるものを使うことになると思います。)
食器は料理の内容と世界観に依存します。さらにテーブルクロスやランチョンマットなどの布系が付加されれば色も加わって世界が広がりますね。
さらにキッチンやマーケットっぽい世界観を作るなら生の食材やまな板などを用意することで雰囲気が出ます。
食卓の雰囲気なら、飲み物のグラス類や、個々の皿やカトラリー(ナイフ&フォークなど)、必要なら花などを用意したりして雰囲気を作ります。
さらに、スタジオならちらっと見える床や窓などを演出することで、まるで家で撮ったようにまで演出可能です。

このようにシンプルから相当の引きにも耐える演出まで、広範囲ですので、予算や必要性に合わせて作り込んでいきます。でも最近の料理写真はあまり複雑なシチュエーションを作らずにシンプルに料理中心で撮影することが主流のようですね。

上のピザの写真は、秋にヨーロッパで取れる高級キノコ「ポルチーニ」が主役でしたので、世界観を「イタリアの郊外にある隠れ家のような高級レストラン」としました。イタリアっぽく半屋外の雰囲気で自然光で撮影しました。
下の写真は世界観を「アメリカンダイナーのキッチン横カウンター」としてスタイリストにオーダーしました。実際には国旗や写真立てはないかもしれませんが、小道具としてとても効いていますね。

pizza_american.jpg

nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

認知されたイメージ [クリエイティブ]

世の中には「一般的に認知されたイメージ」というものがあります。
たとえば「女性は男性より髪の毛が長い」「野球の帽子のマークはつばの上のセンターについている」「玄関の鍵はだいたいノブの近くにある」「泥棒は黒っぽい格好をしている」などなど。

私たちの分野にもたくさんあります。
例えば“多くのウェブサイトは、上の方に横に、または左の方に縦にナビゲーションボタンがある”というのがありますね。だいたい8割がたでしょうか。その通例に従ってデザインを進めれば、公開した時に、見る人は迷うこと無くオペレーションしてくれるはずです。
他にもクーポンをデザインしてくださいと言われたら、金券のようなデザインを思い浮かべると思います。そうすることで、人々は、ああ、ここにクーポンがあるなというのを一目で理解しますよね。

この一般的に認知されたイメージというのを使うことには、とてもメリットがあります。

でも、デザイナーというのはそういうことに対して冒険やブレークスルーを試みようとします。この行為自体は当然のことですし、正しい行いです。何も考えずに上記のような一般法則に則ったものだけではつまらない。
但しここで考えなくては行けないのは、この一般的に認知されたイメージを打破させるにはパワーがいるということです。例えば一般的に蔓延させる量的なパワー(CMだと投下量)、モチーフである商品そのもの、またはブランドの魅力、さらには、非常に興味を引かせたり面白そうだと思わせるギミック(PRも含めます)などなど。

上記のサイトの例ですと、意外なところにボタンがあって良く分からない。ウェブやデザインに興味がある、またはサイトそのもの自体にどうしても見たい衝動が無い限り、ただ立ち寄った人のほとんどは分からないままスルーしてしまうんじゃないでしょうか。

冒険や新しい試みはとても必要です。ただ、一般的に認知されたイメージを使うことはそれだけで、理解のスピードを早くするということを頭に置いて、その上でやらなければ行けません。先ほども言ったように量的なもの、そのもの自体がとても魅力のあることなどを考慮に入れながら、行ける時には行っちゃってください。
もしかしたら新しい認知を作り出せるかもしれませんものね。

NDGarden.jpg
http://garden.nature-decor.com/
※今日公開した新しいガーデン製作のホームページです。
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

煮詰まった時 [クリエイティブ]

前にも書きましたが、若いときは引き出しが少ないから、案出しによく行き詰ります。

上司に案を見せた時に「全部だめ」もしくは「これはいいけど、もっと考えて!他にもあるでしょ」とか言われますよね。デザイン事務所の良くある日常です。
自分としては、絞り出したつもりです。「そんなこと言われたってもう出ねえよ」となっちゃいます。

人によって違いますが、そんなときの私の方法をいくつか書いてみます。少しでも参考になればうれしいです。
1:実はオリエンテーションのディレクターとかの言った言葉が足かせになって、結構自分から範囲を狭めてることがあります。もっと自分の中の枠を広げて大胆になってみましょう。上司は若い人にドンピシャよりは、「やり過ぎとは思うけど面白いかもね」を求めていたりすることが多いです。ある程度オリエンの道筋からはずれても、結果的に効果があれば、採用されたりします。

2:自分の経験値に無いものは、他から刺激を得ましょう。まずは手っ取り早く会社の資料を片っ端から見てみましょう。まったく別のクリエイティブから、ひょっこりとヒントが出たりします。

3:会社の資料に無かったら、書店や図書館に行ってみましょう。本のあるところはトイレに行きたくなるので、長時間いるためにはトイレに先に行くのを忘れずに。

4:環境を変えてみましょう。まずは頭をクリアにするために会社を出て、好きなスペースに足を運びましょう。喫茶店でもいいし、ベンダーで飲み物を買って公園でもいい。但しおなかがすごく空いてないのに食事系は頭がぼけます。

5:もし翌日に持ち越せるなら思い切って帰りましょう。電車に乗れる人はラッキーです。電車に乗ってると結構案が出たりしますよ。小さいメモを持って電車に乗って少し上を見ながらぼけっと考えてみましょう。周りの人を見ててもいいかもしれません。翌日の行きの電車も一回寝てるので、さらにいい場になるはずです。

6:もし以前書いたようにアイディア帳を持っていたら、きっと一度見てると思いますが、これは違うよなって外していたものをもういちど無理矢理結びつけてみてください。アイディア帳は自分が気に入ったものばかりのはずだから、無理矢理でもなんだか面白いものになる可能性があります。

そうやってダメな状態からがんばって、出して行く経験をたくさんしたら、後々ものすごく楽になります。あきらめちゃうヤツはだめです。
つらいけどすべて自分の肥やしになりますので、がんばってくださいね。

seed.jpg
渋谷に昔SEED館ってありましたよね。懐かしいです。SEEDがホンダと組んでモーターサイクルウェアを出したときのポスターです。

タグ:案出し
nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

筆文字 [グラフィックデザイン]

逍遥.jpg
わりと廃れないなあ、どころか結構外国の人も大好きだったりして、日本の文字デザインの国際大使だったりする“筆文字”。
外国の人には映画「キル・ビル」の日本刀のようなエキゾチック感だったり、和太鼓のような激しさだったり、古文書のような歴史感だったりするのでしょうね。訳も分からず、なんだかかっこいいグラフィックとして使ったりしています。

さらに映画「書道ガールズ」のように最近の若い日本の人も新しいスタンスで、興味を持っているようで、今やひとつの「かっこいい」文化なのかな。「勢い」を表現できる書体としては世界的に見ても最右翼です。

私たちが筆文字を使いたいと思った時、それがロゴタイプだったりする時は(和食の飲食店や居酒屋、和菓子店などで筆文字ロゴを使ってるところ多いです)専門の筆文字アーティストや、筆文字を専門にしている会社に頼みます。イメージを伝え、いくつか候補を書いてもらい、選んだ方向で、さらに詰めて行きます。基本は、書き文字なのでオリジナルで起こして行きます。

さらに最近ではネットでオリジナルで書いてくれる筆文字や、いくつかのオリジナル書体を一文字いくらで販売してくれる所もあるようです。

様々な理由で自分で書く時もあります。プロではないので、気に入った文字になりまで50〜100もしくはそれ以上書かなくてはならないです。紙の染みが必要なら和紙のような紙に書きます。グラフィック的には飛び散った墨なども重要なポイントですね。

筆文字.jpg
書体フォントとして出ている筆文字系も楷書や行書など非常にバリエーション豊かです。今、うどんの会社の仕事をしているので、筆文字風フォントはぴったりです。
kodawari.jpg
筆は、元は中国が発祥だと思いますが、今や日本のひとつの象徴でもあります。文字から墨絵などの絵画、アート、メークアップに至るまで無限大の可能性を持ってるツールですよね。

筆文字やアーティスティックなグラフィックに、我々の世界でも歴史的なものをベースにしながら発展していくのはとても楽しみです。

nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

ページの中の写真のレイアウト1 [グラフィックデザイン]

ひとつ前でお話しした山田さんの写真集は、すべての写真が「断ち落とし」でレイアウトされていました。
ひとつの写真を1ページ(または見開き)にレイアウトするのに、大きくわけて断ち落としまで写真を一杯にレイアウトするか、白地の枠を取ってレイアウトするかに分かれます。特に文字を合わせてレイアウトする時は悩む時がありますね。

photo_tachi.jpg

断ち落としにする写真はページの大きさ以上の広がりを見せますので、ページをはみ出した世界観を期待できます。インパクトも大きいですよね。印象として「屋外」的な広がりと開放感があります。写真のスケールが大きく素晴らしい写真なら、AD、デザイナーはぜひやりたくなるレイアウトです。

photo_waku.jpg

対して枠を取る写真は、まるで屋内から窓を通してみる風景のように「切り取られた空間」になります。額で飾られた絵画のように美しく、愛らしく、自分のもの的な内向感があります。“大事にされている写真”ですよね。トリミングがページのディメンションに依存せず、画額的には理想的で(カメラマンの撮ったそのままで)レイアウトが可能です。文字が入る場合、外に出せるのも利点です。

カメラマン本人も、自分の撮った写真が上記2つのどちらかでレイアウトして欲しいと言う希望があるんじゃないでしょうか。撮った写真によりますものね。どっち向きの写真なのか、撮った人は分かるはずです。もちろん強く思う人とそうでない人がいるとは思いますが。

組み写真でも余白を入れないで断ち落としたりするレイアウトがあります。この場合、スケール感というよりは少し荒削りな「勢い」という強めの印象です。
同じように数枚の写真を同一ページにすべて断ち落とし部分を作らずに入れた場合、「おとなしい」印象になります。(写真の大小のつけ方にもよりますが)

上記をふまえてページ物の場合には、断ち落としと余白の組み合わせをうまく組み合わせることによって「リズム」を作ることが出来ます。もちろん全部断ち落としにしたりして「突っ走る」のも方法のひとつですしね。

※サンプルは2年くらい前に作った鎌倉の写真集です。


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。